「・・・っ!」

「ピス・・・トル・・・を、よこせ・・・!」

必死の面持ちでそれを言い、驚きにかたまっている私を感じ取ったらしく無理やり私の手の中からピストルをもぎ取って、血にまみれていない方の手でピストルを握り引き金に指をかけた。

私を、道連れにする気かしら・・・意図が見えず、困惑していると、

「これ、は・・・事故、だ・・・!お、まえは・・・なにも、していない・・・!」

そう息も絶え絶えに言うと、いつものように優しく笑って、「愛してた」そう言って倒れて行った。



私の膝の上に倒れた紅藤様は、か細いけれど必死に息をしている。

・・・何て言ったの、私が撃ったのよ、私が仇を討つために、撃ったのよ、なのに、紅藤様、事故、ですって・・・?愛してた、なんて・・・。

最後の紅藤様の言葉が私の心の外れてしまったネジを、元に戻したらしい・・・今までのことが嘘のように感じられた。

「紅藤様!?紅藤様!!」

呼びかけても紅藤様から返事はない。

私は、何をした?尋が私を愛していなかったことなど当たり前のことなのに、どうしてあんなものを見ただけで尋にとらわれてしまったの、どうしてこの人の愛情を疑ってしまったの、この人はこんなに愛してくれているのに!

「いや・・・いや!紅藤様!いやぁ!」

どんなに呼んでも紅藤様は返事をしない・・・だめ、死んでしまう、このまま放っておいたら紅藤様は死んでしまう・・・私が撃ったピストルの弾によって!

「だれかぁ!!!!!だれかきてぇぇぇ!!!」

目の前が真っ暗になって、狂ったように人を呼んだ。

すぐさま召使いたちがやってきて、紅藤様を病院に運ぶ手はずを整えて、紅藤様の血に汚れて発狂している私の洋服を取り換えた・・・変ね、自分が発狂しているのを、どうしてこんなにも客観的に見つめているのかしら。

私は、召使いがきても、病院に運ばれていく紅藤様を見ても、紅藤様がいなくなっても、召使いに抑えつけられながら、叫び続けた。

「こうとうさまぁぁ!いやああああぁぁぁああああ!」