「今日は何か変なんじゃないか?」

今日も求めてくる紅藤様に何故か嫌悪感を感じて、とっさに「生理がきました・・・」とうそをつく。

そうか、じゃあ冷やさないようにしないといけないな、なんて優しいことを言ってくれる紅藤様の腕の中で、幾分平静を取り戻した頭で、必死に考えた。

どうして、紅藤様があんなものを持っているのか。

紅藤様が持っていたものは、もう記憶のかなたへと忘れ去られていた、あの人―――尋が後生大事に持っていた、金属の冷たい印象の小箱だった。

私だって、彼がくれた首飾りは、処分に困って、でも目障りに思ってたんすの奥底に仕舞ってあるけど。

紅藤様が持っているべきものではないわ、だって、尋が死にゆく日だって、「これは俺のものだ・・・!」と血走った眼で言いながら、大事そうに懐に仕舞っていたし・・・。

そう言えば、あれは、どこに行ったのかしら・・・ううん、尋の体ごと、私は行方を知らない。

誰が尋の体を始末したのかしら・・・単純に考えたら、尋が殺そうと思っていたあの男よね、尋がそう考えるくらいだから、よっぽどの理由がそこにはあったはずで。

尋の体を始末した人間なら、あの箱を尋の懐から取り出すことができるわよね・・・。

少しずつ少しずつ思考を進めてきて、耳元で穏やかな紅藤様の寝息を聞きながら、びく、と思い切り体を反応させてしまった。


「・・・・・・」


紅藤様は覚醒まで行かなかったのか、無意識に私を抱きなおして再び眠りへと落ちて行った。

ただ、その時の私にはもう、紅藤様が起きてしまうだとか、そういうことを考える余裕はなくなっていた。