彼の背中には蜷局を巻いた、それはそれは見事な龍がいた。

「・・・これは・・・」

「そういう会社があってね。ああいうやつらを一喝するには、こういうのも意味を持ってくるからね。俺はそこの役員で、この地域を任されているんだ」

「まぁ・・・!」

闇がはびこるこの街に、そういった・・・簡単に言うと彼が言ったような正義の味方的な人がいることは知っていたが・・・本当にいるとは、まさかそんな人に会えるとは、思わなかった。

大金を持っていて当然だし、上客というのも当然、ピストルを持っているのも、もっと当然で、彼の人を簡単に従わせてしまうような態度も、当然のことのように思わせた。

蜷局を巻いた龍に恐る恐る指を這わせていく。

「・・・怖いかい?」

なぜか少し怖々とそれを聞いてくる紅藤様を不思議に思いながら、背中の龍に膚を寄せる。

「・・・いいえ。あんまりにも綺麗な龍だったので・・・。動くんじゃないかと。触ってみたくなったんです。」

私がそう言うと、心底安心したように、でもなんだかびっくりしたように笑いながら、

「お前は、変わっているね。普通、女はこれを見せると怖がって離れていくんだよ・・・。わかっているのかい?お前は、マフィアを束ねるボスの女なんだよ?」

ピストルも持っているしね、なんておどけたように言っているけれど、別に、関係ないのじゃないかしら?

「・・・それが、どうかしたのですか?私は、貴方に身を任せていればいいだけではないのですか?」

抱かれているうちに、私は、紅藤様のものだと、自然と心の準備ができていた。

あの人は、まだ納得がいっていないかもしれないけれど、時がとまったあの人と、同じ時を刻んでいる紅藤様とでは、比べようもないのだ。

そう言うと、心底嬉しそうに、彼は笑った。

「そうだよ、わかっているじゃないか・・・。今度は、お前が俺の質問にこたえる番だ。お前は何か、心の中に秘密でも持っているのか?たとえば、他に男がいる、とか」

紅藤様の言った言葉が、あまりに図星すぎて、言葉を失ってしまう。

「・・・お分かりに、なりますか・・・?」

「いや?なんとなく、そうなんじゃないかな、ってね」

私に向かいなおして、抱き込んでくる。