華の咲く場所

女将や、女将の使いの茶英に言われてここをどくというならわかるけれど、私たち店の商品だけでそんな勝手なことできるわけないのに、どれだけ自分は偉い立場にあると思っているのこの女。

というか・・・一位の座だったお姉さまがそれだけ固執するとは、紅藤様は、どれだけすごいお人なのだろうか・・・。

「お姉さま、どういう風にこのことがお耳に入ったのかは存じませんが、紅藤様は、私に、自分以外の客は取らないように、とおっしゃいました。そして、紅藤様自らが追加料金をお支払いになってこのような状況になったのです。それを私たちの判断で変えてしまってはまずいと思うのですが・・・。」

「口応えをするでない!」

なるべく相手の気を逆なでしないように言葉を選んで選んで話したが、相手には何をどう行っても無関係のようで、早くも堪忍袋の緒が切れたのか、私につかみかかってきた。

それまでことの成行きを見守っていた取り巻きたちも加勢して、髪を引っ張られたり殴られたり、子供の喧嘩のようだ。

「お前など、いらないのよ!」

「調子に乗るんじゃない!」

「お姉さまが一番なのよ!」

美しく着飾った般若の口から出てくるのは全てが罵詈雑言で、世の中に完璧に美しいものなど存在しないのだと、嫌でもわからされた。


「・・・そうね、消えてしまえば、簡単ね」


一位の座のお姉さまは、取り巻きたちの言葉に何か思い当ったらしく、果物用の包丁を手に取り、壊れたような笑みを浮かべて迫ってきた。

取り巻きたちは正常な顔つきをしているけれど、自分の慕う女によほど感化されているらしく、私が逃げ出せいないように、四肢を押えこんできて、それはじぶんひとりがどうあがいても抵抗できないものだった。

今までは子供を相手している気分でいたので特に危険を感じてはいなかったけれど、この状況になって突然感じた危険に、体中から嫌な汗がでる。

このままでは私は殺されてしまう、その方が楽になれるのかもしれない・・・けれど、いやだ、あの人のいる向こうの世界へなど、行きたくはない・・・混乱する頭の中で明滅するのはあの人ではなく紅藤様で、気付けばここにはいない紅藤様に必死で助けを求める自分がいた。