うつされた部屋は、今までの部屋が嘘だったかのような部屋だった。

褥を10組おいても、まだ余るのじゃないかしら。

自分の部屋に厠や風呂まで付いているなんて・・・。

「今日はこちらをお召しください。明日からは、そちらの衣裳部屋にあるものを、どれでもお好きにお召しください。お着替えになりましたらお呼びください。」

茶英は必要事項だけを述べると、部屋を出て行き、『がちゃん』と、重たい鍵をかけた。

・・・地位が上になると部屋が与えられるのは知っていたけど、軟禁状態にされるなんてことは知らなかったわ・・・。

着替えようとして衣裳やら装飾品を見ると、それは昨日までのものとは違い、見たこともないような豪勢なものとなっていた。

紅藤様は、何者なのか・・・追加料金を払ったと言っていたけれど、そんなことができるほどのお人なのか―――今日、来ると言っていたけれど・・・。

それとともに、心の中がどんよりと重くなる。

忘れようと思っていたのに、どうせ一夜限りのことと思っていたのに・・・『あの人』への誓いが崩れてしまう。

もう、あの瞳で見つめられたくないのに・・・でも無情にも時間は訪れてしまうもので。

茶英に導かれて、今日も、店へと足を向けるしかなかった・・・。