星の唄



「そんなに結衣が気になるなら会いに行くか?」

「…え?」


後ろを振り返ると結樹がいた。


「別に会いにも行けるし、星の部屋に呼んだっていいんだぞ。」

「………。」

「恐いだろうけど会ってみないと解らないことだってあるんだ。気にしてたって相手には解らない。」

「………。」

「ま、好きにしろ。これ結衣の部屋。大丈夫。精神は安定してた。会っても問題はない。」


何も言わない奏空に結樹はため息をつき、番号の書いたメモを渡した。
奏空が受け取ったのを確認し終えた彼は、満足げに部屋へ戻って行った。


(…会う…か……。)


確かに気にしてはいるものの、今日だって上手く説明も出来ない。
それなのに会っても話は出来るんだろうか?
会って彼女に何かしてあげられることはあるんだろうか?

彼女が奏(カナデ)のようにはならないと誰が保証できるんだろうか…?


『動かなければ何も出来ない。
 解ってはいる。
 それでも動けない時。

 人はどうすると思う…?』


昔、楓が言っていた。

あの時なんて答えたかは覚えていない。
けれど、今の奏空には答えられない問いだった。