廊下を歩く結樹は独り言のように呟いた。

「たぶん入れると思うんだけどな…。」

奏の負担を避ける為、部屋は関係者以外立入禁止になっていた。
実のところ結樹も奏の部屋の中にはあまり入ったことがなかったのだ。

「どうして?奏空は普通に入ってたよ?お兄ちゃん関係者じゃないの?」

結衣も奏の部屋が関係者以外立入禁止になっているのは知っていたが、関係者をプロジェクト関係者だと思っていた。

「あぁ、奏空は入れるよ。奏は奏空の妹だからね。関係者ってのは一応家族だけって決まりなんだ。」

「え………?」

結衣は驚きのあまり、歩く足が止まっていた。
奏は奏空にとって大切な人だと聴いたが、妹という話は聞いたことがない。

「ん?」

「奏さんって奏空の妹なの……?」

「…?知らなかったのか?」

結樹は意外という顔をした。
奏が驚いてたのも、きっとこれだったのだろう。

妹と聴いた瞬間、結衣の中で何か解らないものがホッと胸を撫で下ろしていた。

「歳も結衣とあんまり変わらないよ。ん?あぁ、調度同じ年齢か。」

「そうなんだ…。」

少し違えば結衣が奏のように夢の中で迷子になっていたかもしれなかったんだ。
結衣は少しだけそう思った。

「着いたぞ。」