どれくらい経っただろう?
それは優しくて不思議な時間だった。
暖かくて幸せで。
時間が止まればいいな、とも思える時間だった。
―…ピピピッ。
『…ソラ?』
「あ…。」
「え…?」
突然、ソラのポケットから電子音がした。
『ソラ、ユイヲミツケタカ?』
ポケットから聞こえたのは結樹の声だった。
その瞬間、ソラはサッと結衣から離れた。
顔を真っ赤にし、結衣から目を反らしていた。
「…見つけた。今から帰る。」
ポケットから携帯を出して、ぶっきらぼうにそう言った。
いつものソラとは違う。
ソラは耳まで赤かった。
『アァ、タノンダゾ。』
結樹は声だけではソラの変化に気付かないんだろうか。
そのまま通信を終えた。
「結衣ちゃん、戻ろうか。」
「戻る?」
「うん。ここはいつもの夢じゃないんだ。長くいると身体に良くないから。」
「そうなんだ…。あ。じゃぁあの女の子も連れていってあげなきゃ。」
「女の子?」
女の子と聞いた瞬間。
ソラの顔から赤い色も笑顔も消えた。
代わりに眉間にシワを寄せている。
「う…うん。」
「もしかして…金色の長い髪?」
「え?!うん、そうだよ。どう……。」
結衣は¨どうして?¨とは聞けなくなった。
ソラの顔は、今まで見たことがないくらい哀しそうな顔をしていた。


