飛べない鳥

俺はマンションに戻り、
買ってきたメロンパンを半分だけ食べ、風呂に入り再び眠りについた。



───………


──……



『ママ…』


俺が母親を呼ぶと笑顔で振り向いてくれる。


俺は母親の手を握りしめた。



『なに?遥斗…』



母親は俺の小さな手を握り返してくれた。



『ママの願い事はなぁに?』



『遥斗とずっと一緒にいることよ』



『ママだぁいすき!!』



何故最近、昔の自分が夢の中に出てくるのだろう?



必ず母親と一緒だ。


でも母親の顔は思い出せない。



その夢を見る度、
すごく苦しくなる──…


人間を信じられなくなる。


母親なんか嫌いだ。



なのに…思い出だけは、
こんなにも鮮明に思い出される。



思い出なんかなくなってしまえ。



あるのは、今と、未来だけでいい。