飛べない鳥

『水ちょうだい?』


俺は食べかけの野菜炒めを一旦置いて、グラスに水を注いだ。


『ほら…』


『んっ…』


響に水を渡す時、
俺は響の首筋のところに赤い痕がある事に気が付いた。


『お前何それ?首んとこ』


俺はその痕を指しながら、響を睨んだ。


響の動きが一瞬止まった。


『これ?…あ~…』



響はその痕を隠しながら、向きを変えた。


『元カノ?』


俺はすぐにピンときた。


昨日元カノと会う約束をしていたな。



もしかしてとは思うが、
響…嘘だろ?



お前は好きな人がいるんだろ?


お前は佐藤先生が好きなんだろ?




響は俺の質問に答えようとしない。


ずっと下を向いたまま、
黙っている。


痺れを切らした俺は、
響に近付いた。



『何とか言え』



春風が強くなり、窓が揺れる音が部屋に響く。