飛べない鳥

すると菊地唯は、急に立ち上がり、俺を見た。


『私、橘君見てると心配なの!ほっとけなくなる!
橘君はいつも何かを考えてる気がする』


『は?』


生暖かい風が吹く。



『目を見れば分かるよ!
私、思うの。いつか橘君がいなくなるんじゃないかって…消えちゃうんじゃないかって…すごく心配…』


だんだんと弱々しくなっていく声。


俺はごくんと生唾を飲んだ。



こいつは何者だ?



『心配してくれなくていいから、俺はただこの世界が嫌いなだけだ』


『橘君っ!』


─バタンッ……



俺は勢いよくドアを閉めた。


菊地唯は、他の女とは何かが違うと察知した。


俺が他の人間と違うのだと気付いたのは、俺が出会った中できっと菊地唯だけだろう。


菊地唯は、俺の心を占領した。