飛べない鳥

足が疲れていようが、
息が荒れていようが、

そんなの関係ない。



君に早く逢いたかったから…



唯の家へと刻々と近付いていく。


右を曲がったら、もうすぐそこが唯の家だ。



でも俺には唯に会う前にやることがあった。



俺はそのやることを先に済ませてから唯に伝えたかったんだ。



俺は唯の家の前に立ち止まり、インターホンを強く押した。




…─ピーンポーン…


その音に反応した家の中にいた人が、玄関から顔を出した。



『はい?』




『俺だよ…』




唯の母親であって、
俺の母親である人は、手を口に当てて、目を見開いていた。



俺は唯の家の門を通り、母親に近付いた。



母親は言葉を失ったのか、なにも話さずただ俺を見ていた。




『遥斗…』



母親は俺の体に触り、涙を浮かべた。