俺は行く当てもなくただひたすら走った。


夜で、人通りが少ない細くて狭い道を、ただ走っていた。



唯がいる場所なんて分かりもしない。


唯が今思っていることなど分かりもしない。



でも俺は唯に逢いたいから…唯の笑顔が見たいから…


俺はこの街を走る─…



俺が信号が青になるのを待っていると、車のクラクションの音が鳴った。



俺は横を見る。



そこには一台の車が止まっていた。


そして助手席から顔を出したのは、見覚えのある顔。



『遥斗?こんなとこで何してんだよ?』



何故か、そいつの顔を見たら、ホッと心が安らいだ気がした。



『響っ…』



俺は響のいる車に近寄った。



車の中を見ると、運転席には先生の姿があった。



『橘君?どうしたの?こんなとこに一人で』




先生なら…唯の場所知っているかな…?