『橘君?』


俺は誰かに呼ばれた気がしたので後ろを向いた。



そこには杏に告白されたときに付き添いとしてきていたテンションが高い子だった。



『あっあのさ、杏知らねぇ?』




『杏?杏ならあそこにいるよ!』



彼女はクラスの中心を指さした。


彼女が示した場所には男しかいない。


この子は何を言ってるんだ?



すると響がその場所にめがけて杏の名前を呼んだ。




『杏ちゃ~ん!!』



響の声が、その集団に聞こえのか、こちらを振り返っている。



そしてその集団の中から、ひょこっと杏が顔を出した。



『えっ?』


驚いた顔をしていた杏は、俺達を見て、顔を真っ赤に染めた。



『ちょっと来て』



俺は杏に手招きをして、こちらに呼んだ。


杏はその集団を掻き分けて、俺達の方に向かってくる。



可愛らしい、笑顔を見せて。