飛べない鳥

『珍しいな、お前が俺より早いなんて』



俺は腰を下ろした。


この感情を、唯にバレないように、必死にいつもの俺を演じる。



『遥斗のこと待ってたの』


唯が空を見上げながら言った。


その言葉に、俺の心臓は素直に弾んだ。



『…ふーん』



ギラギラと燃える太陽は、俺達をいつまでも照らしてくれていた。



『ねぇ遥斗!』



急に唯が俺の隣に座りだした。


『何?』



『約束はいつまで有効だと思う?』



俺は《約束》という言葉に、敏感に反応してしまう。

そして、暗い表情に変わる。



『約束なんて…ずっと無効だ』


いきなり暗くなった俺を見た唯は、黙ってしまった。


唯は、ただひとつの約束をずっと信じていたんだ。



俺は、忘れかけていた。


過去に出会ったある人間との約束を──……



その約束は母親との約束ではない。



あの時の約束だ…


この約束を思い出すのは、随分先のこと──……