飛べない鳥

もう後ろを振り返らなくても誰だか分かる。


唯ではない。


唯の声は甘く癒される声だから──……



『なんだよ、美咲?』



『おはよ!』



男ならこの笑顔に惚れるだろうが、俺は惚れたりなどしない。


ただ呆れた顔をして、
元気な美咲を見た。



『何?』


『昨日はごめんね?
今からどこに行くの??』


美咲がこう質問するのも無理もない。


あと少しでチャイムが鳴るからだ。



なのに俺は一年生が普段いない場所にいる。


きっと美咲は不思議に思ったのだろう。



『…内緒』


俺は屋上とは言わず、
屋上がある場所に進んで行った。



すると後ろにいた美咲が、俺の袖を引っ張った。



『私も行っちゃだめ?』



甘えたって無駄だ。


可愛い顔したって意味ないよ?



屋上は俺と唯の二人きりの場所なのだから。