飛べない鳥

屋上へと向かっている途中、俺はトイレに寄り道をした。


鏡で自分の今の姿を見たかったんだ。



鏡に写った俺は、
今までの俺ではなかった…と思う。


人間が大嫌いな俺に芽生えた恋心。


人間を信じられないのに、人間を信じようとした自分がいた。



この鏡に写っているのは誰だ?



紛れもなくこの俺だ。


…橘遥斗だ。



でもあの今朝の夢で俺は気付かされた。


俺には何かが足りない。



考えても見つけ出せれない。



折角見え始めた新しい自分を、俺はなかなか受け入れられなかった。



しばらくして、俺はさっきの猛スピードから、いつもと同じぐらいの歩くスピードで屋上へと向かった。



途中、後ろから俺を呼ぶ声が聞こえる。



女の声だ。


『遥斗~!!』




『…あいつか…』