あたしは、木片を握りしめたまま、その場に仁王立ちしていた。

何も言葉は交わさないまま、春は立ち去った。あたしは、春の姿が見え無くなるとすぐに政樹を揺さぶった。

「政樹!」

中々反応しなかったが、滝の水を顔にかけると、やっと目が醒めた。

「あ…?」

「政樹!しっかり!」

「夢?頭痛ぇ…俺寝てた?」

「春に殴られて意識を失ったの。」

政樹は目を真ん丸くした。
「春!どこに!」

「もう、いないよ。あたしが追い払ったから。」

「夢…悪いな…。」

「大丈夫!」

その場で横になったまま、二人で朝日を眺めた。