「滝!滝に携帯電話があるんじゃない?」

その時だった。ボコッ…と鈍い音がして、政樹があたしに倒れ込んできた。

「きゃっ…!」

政樹の後ろには、春が立っていた。

「夢…そのヒントなら一緒に帰れるな…。」

あたしは、ショックで声も出なかった。政樹は脳震盪でも起こしたのか気絶している。気絶している人を見るのはここに来てから2回目。だが、殴られて気絶したことに動揺と不安は隠せなかった。

「リングを渡して。夢…俺達あんなに愛し合ってただろ?よりを戻そう。…な?」

あたしは黙って、小さく首を振った。不気味な笑顔をたたえていた春は、これまでに見たこともないくらい恐ろしい表情をするなり、あたしに飛び掛かり、地面に押し倒した。