「起きたと云うか、楓に起こされたよ」
「昨夜、早く寝ないからよ」
美奈子は照れた様に高濱に話し掛け乍化粧を終え立ち上がる。結婚をして子供が出来ると、夫婦としての時間を持つ事は思いの他に難しい。高濱は、昨夜の余韻に浸り乍椅子の上でノビをしていると、美奈子が顔を覗き込んで来る。
「朝、コーヒーだけで良いかしら?」
「頼むよ」
高濱は、マグカップに注がれるコーヒーを眺め乍セブンスターに一服点ける。
「今日、何処に行くかな?」
「何も考えてなかったの?」
呆れた声を上げる美奈子に、高濱は申し訳無さそうに頷く。美奈子は、そんな高濱を横目に窓から見える空を見上げて振り向く。
「そうねぇ。今日は凄く天気が良いんだから、釣りって云うのは如何かしら?」
「そう云えば、釣りは何年もしてないからな。結構良い案かも知れないな」
高濱はコーヒーを啜り乍頷く。釣りは、結婚前に美奈子と行って以来行っていない。子供が息子で有ったなら、釣りや野球で遊んだかも知れないが、生まれたのが娘と云う事で、高濱はアウトドア的な遊びはする事無く、比較的美奈子と楓に合わせて来た。
「じゃあ、準備をしようか」
高濱が意を決した様に美奈子に声を掛けると、美奈子は嬉しそうに弁当を袋に詰めて、出発の為の準備を始めた。
*
波飛沫が防波堤に当たっては上空に舞い上がる。高濱はダウンジャケットを羽織、ロッドを思い切り振り被り沖へと振り下ろす。ロッドの先。重りを付けた糸は勢い良く沖へと飛び、派手に水飛沫を上げて着水する。
「すご~い。あんなに遠くへ飛ぶんだ」
楓が嬉々とした声を上げて高濱の横に近寄って来る。高濱は、父の威厳を発揮とばかりに胸を張り、ロッドを楓に差し出す。
「リール、巻いて見るか?」
高濱が優しく楓に話し掛けてロッドを差し出すと、楓は嬉しそうにロッドを掴みリールを巻き出す。
「パパ、凄く重いよ」
「魚が食い付けば、もっと重くなるさ」
風が激しく吹き、互いに聞こえ難い声に苦労するが、その聞こえない事を楽しむかの様に、楓は笑顔で頷く。
「昨夜、早く寝ないからよ」
美奈子は照れた様に高濱に話し掛け乍化粧を終え立ち上がる。結婚をして子供が出来ると、夫婦としての時間を持つ事は思いの他に難しい。高濱は、昨夜の余韻に浸り乍椅子の上でノビをしていると、美奈子が顔を覗き込んで来る。
「朝、コーヒーだけで良いかしら?」
「頼むよ」
高濱は、マグカップに注がれるコーヒーを眺め乍セブンスターに一服点ける。
「今日、何処に行くかな?」
「何も考えてなかったの?」
呆れた声を上げる美奈子に、高濱は申し訳無さそうに頷く。美奈子は、そんな高濱を横目に窓から見える空を見上げて振り向く。
「そうねぇ。今日は凄く天気が良いんだから、釣りって云うのは如何かしら?」
「そう云えば、釣りは何年もしてないからな。結構良い案かも知れないな」
高濱はコーヒーを啜り乍頷く。釣りは、結婚前に美奈子と行って以来行っていない。子供が息子で有ったなら、釣りや野球で遊んだかも知れないが、生まれたのが娘と云う事で、高濱はアウトドア的な遊びはする事無く、比較的美奈子と楓に合わせて来た。
「じゃあ、準備をしようか」
高濱が意を決した様に美奈子に声を掛けると、美奈子は嬉しそうに弁当を袋に詰めて、出発の為の準備を始めた。
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波飛沫が防波堤に当たっては上空に舞い上がる。高濱はダウンジャケットを羽織、ロッドを思い切り振り被り沖へと振り下ろす。ロッドの先。重りを付けた糸は勢い良く沖へと飛び、派手に水飛沫を上げて着水する。
「すご~い。あんなに遠くへ飛ぶんだ」
楓が嬉々とした声を上げて高濱の横に近寄って来る。高濱は、父の威厳を発揮とばかりに胸を張り、ロッドを楓に差し出す。
「リール、巻いて見るか?」
高濱が優しく楓に話し掛けてロッドを差し出すと、楓は嬉しそうにロッドを掴みリールを巻き出す。
「パパ、凄く重いよ」
「魚が食い付けば、もっと重くなるさ」
風が激しく吹き、互いに聞こえ難い声に苦労するが、その聞こえない事を楽しむかの様に、楓は笑顔で頷く。


