「さて、冒頭でお伝えした殺人事件ですが―」
淡々と語られるニュースの内容事態は、何処にでも有る物だと云う気分で見ていた高濱だが、その当たり前と思う自分に愕然とする。本来なら、どんな理由が有ったとしても殺人は許される物では無い。だが、現実問題としては、殺人は日常の一環と云える程に当たり前の様に起き、事件の理由も多岐に渡っている。金銭が目的の場合も有れば、恨み等の場合も有るが、人が中心の社会で有る限りは、軋轢や欲望が生まれるのは仕方が無く、大体の人間は、自身に直接的な関係が無い限りは、催し物の一環と云うか、見世物的な感覚でニュースを眺め、他人事の侭で毎日を送る。感覚の麻痺。高濱も、自身のその感覚に吐き気を覚える。他人事だから関係が無い。身近だから怖い。高濱は、そう云った自分の汚れた感覚を拭い去る様に、猪口に酒を注ぎ一息で煽る。
「まさか、こんなに近所で殺人が起こるとは思わなかったよ」
「ええ。このマンションから自転車で十分程でしょ、怖いわ」
「戸締り、気を付けないとな」
高濱が短く云うと、美奈子は「分かったわ」と返事をし、テーブルに鍋の用意をする。
「さて、今日は貴方の大好きなオデンよ」
美奈子は暗く沈んだ雰囲気を拭い去る様な勢いで元気に喋り、高濱も勢いよくオデンの具をハシで掴み、アツアツのオデンの具を頬張る。
「如何?」
顔を覗き込み尋ねる美奈子に、高濱は「美味いよ」と云い、美奈子にも酒を勧める。
「あら、珍しいわね」
美奈子は、差し出された猪口を受け取ると無表情に高濱に言葉を掛けると、高濱は「たまには、な」
と、曖昧に言葉を濁して鍋を突付き、先程のニュースは過去の物とばかりに、夫婦水入らずの時間を過ごす事にした。
淡々と語られるニュースの内容事態は、何処にでも有る物だと云う気分で見ていた高濱だが、その当たり前と思う自分に愕然とする。本来なら、どんな理由が有ったとしても殺人は許される物では無い。だが、現実問題としては、殺人は日常の一環と云える程に当たり前の様に起き、事件の理由も多岐に渡っている。金銭が目的の場合も有れば、恨み等の場合も有るが、人が中心の社会で有る限りは、軋轢や欲望が生まれるのは仕方が無く、大体の人間は、自身に直接的な関係が無い限りは、催し物の一環と云うか、見世物的な感覚でニュースを眺め、他人事の侭で毎日を送る。感覚の麻痺。高濱も、自身のその感覚に吐き気を覚える。他人事だから関係が無い。身近だから怖い。高濱は、そう云った自分の汚れた感覚を拭い去る様に、猪口に酒を注ぎ一息で煽る。
「まさか、こんなに近所で殺人が起こるとは思わなかったよ」
「ええ。このマンションから自転車で十分程でしょ、怖いわ」
「戸締り、気を付けないとな」
高濱が短く云うと、美奈子は「分かったわ」と返事をし、テーブルに鍋の用意をする。
「さて、今日は貴方の大好きなオデンよ」
美奈子は暗く沈んだ雰囲気を拭い去る様な勢いで元気に喋り、高濱も勢いよくオデンの具をハシで掴み、アツアツのオデンの具を頬張る。
「如何?」
顔を覗き込み尋ねる美奈子に、高濱は「美味いよ」と云い、美奈子にも酒を勧める。
「あら、珍しいわね」
美奈子は、差し出された猪口を受け取ると無表情に高濱に言葉を掛けると、高濱は「たまには、な」
と、曖昧に言葉を濁して鍋を突付き、先程のニュースは過去の物とばかりに、夫婦水入らずの時間を過ごす事にした。


