「ジョニーウォーカーの黒です」
瀬戸は手土産をテーブルに置き、視線を高濱に向けると、高濱は「少し待っていろ」と云い、グラスの中に氷を放り込んでテーブルにグラスを置く。
「有難う御座います」
カランと、グラスの中の氷が踊る。高濱はテーブルに置かれている煙草から一本引き抜き、一服点ける。
「酒を、飲みに来たんじゃないんだろう?」
沈黙。瀬戸は俯き加減で高濱を眺める。痩せこけた頬に生える疎らな無精髭。高濱の全身から立ち上る精気は、一目見て分かる程に、疲れきっている。
「石川さんが、殺しの犯人だったんですね……」
瀬戸は小声でポツリと云うと、高濱はウィスキーを一息で煽り、瀬戸を睨み付ける。
「何が云いたいんだ?」
高濱は、怒りを噛み殺す様に吐き捨てると、グラスの中にドボドボとウィスキーを注ぎ足す。
「……」
「こんな深夜に、喧嘩を売りに来たんじゃないんだろ?」
「僕の……」
「なんだ?」
「僕の幼馴染も、石川先輩に殺されたんです……」
チリチリと、煙草が高濱の指を焼く。部屋に流れ出す煙の先、瀬戸は物静かに来訪の意を告げた。
「如何云う事だ?」
「その侭の意味です」
話を促そうとする高濱の言葉に、瀬戸は曖昧な返事をする。真意。その部分が見えない会話の為、高濱は瀬戸が切り出すのを待つ事にした。
「半年程前の事です。僕には、将来結婚する筈だった幼馴染がいました。中学生から付き合ってたので、互いの事は良く分かっていましたし、僕と桜は……フルネームは榎本桜と云うんですが、孤児として同じ施設で暮らしていたんです」
瀬戸は、手に持ったグラスを弄び乍、無表情で話を続ける。
「互いに中学を卒業して、同棲生活を始めたんです。まだ、子供の僕達は、結婚と云う言葉は知っていても、その本質の部分は分かりません。だから、形に囚われる事は止そう。時期が訪れて、互いの気持が求め合った時に入籍をしたら良いって……」
瀬戸の話を要約すると、結婚を前提に付き合っていた女性が居た。数年間は恋人としての時間を過ごし、互いの気持が固まった時に入籍をすると云う、至極堅実な考えの元、平和に暮らしていたと云う。だが、その平和な生活は、半年前の桜の惨殺死体と云う幕が唐突に引かれ終わってしまったと云う。
瀬戸は手土産をテーブルに置き、視線を高濱に向けると、高濱は「少し待っていろ」と云い、グラスの中に氷を放り込んでテーブルにグラスを置く。
「有難う御座います」
カランと、グラスの中の氷が踊る。高濱はテーブルに置かれている煙草から一本引き抜き、一服点ける。
「酒を、飲みに来たんじゃないんだろう?」
沈黙。瀬戸は俯き加減で高濱を眺める。痩せこけた頬に生える疎らな無精髭。高濱の全身から立ち上る精気は、一目見て分かる程に、疲れきっている。
「石川さんが、殺しの犯人だったんですね……」
瀬戸は小声でポツリと云うと、高濱はウィスキーを一息で煽り、瀬戸を睨み付ける。
「何が云いたいんだ?」
高濱は、怒りを噛み殺す様に吐き捨てると、グラスの中にドボドボとウィスキーを注ぎ足す。
「……」
「こんな深夜に、喧嘩を売りに来たんじゃないんだろ?」
「僕の……」
「なんだ?」
「僕の幼馴染も、石川先輩に殺されたんです……」
チリチリと、煙草が高濱の指を焼く。部屋に流れ出す煙の先、瀬戸は物静かに来訪の意を告げた。
「如何云う事だ?」
「その侭の意味です」
話を促そうとする高濱の言葉に、瀬戸は曖昧な返事をする。真意。その部分が見えない会話の為、高濱は瀬戸が切り出すのを待つ事にした。
「半年程前の事です。僕には、将来結婚する筈だった幼馴染がいました。中学生から付き合ってたので、互いの事は良く分かっていましたし、僕と桜は……フルネームは榎本桜と云うんですが、孤児として同じ施設で暮らしていたんです」
瀬戸は、手に持ったグラスを弄び乍、無表情で話を続ける。
「互いに中学を卒業して、同棲生活を始めたんです。まだ、子供の僕達は、結婚と云う言葉は知っていても、その本質の部分は分かりません。だから、形に囚われる事は止そう。時期が訪れて、互いの気持が求め合った時に入籍をしたら良いって……」
瀬戸の話を要約すると、結婚を前提に付き合っていた女性が居た。数年間は恋人としての時間を過ごし、互いの気持が固まった時に入籍をすると云う、至極堅実な考えの元、平和に暮らしていたと云う。だが、その平和な生活は、半年前の桜の惨殺死体と云う幕が唐突に引かれ終わってしまったと云う。


