第六章 決意
「もう直ぐで、完成だ……」
台所の時計は深夜の二時を指し示している。マンションの住民は寝静まり、微かな物音も良く響く深夜。高濱は、黙々とある物を作る事に没頭していた。テーブルの上には、良く見慣れた物や、普段は使う事が無い道具等が散乱している。花火の導火線・グリース・プラスチックケース・ガソリン・小振りの釘・パチンコ球。
「これで良いんだ……」 
 高濱の胸の中。石川への殺意は日を追う程に大きく成る。何故妻を殺したのか。否、石川と云う人間を良く知っている限りでは、殺しと云う行為からは遠く掛け離れている。だが、現実的には、石川に妻を殺され、その他の殺人も次々と明らかに成る。良く知る人間だと思っていても、所詮は他人だと云う事実に、高濱は思い苦しみ、一つの答えに行き着いた。後は、その決意を一つの形とする為だと、狂気への一線を越える切欠を得る為に、高濱は黙々と作業に没頭していると、部屋の中にチャイムが鳴り響いた。
―誰だ?
 深夜の二時を越えての来訪者。高濱は不気味な気配を感じ沈黙を選ぶと、扉の向こうから聞き覚えの有る声が聞こえる。チャイム。等間隔で鳴らされるチャイムに、高濱はうんざりした様に椅子から立ち上がり、ドアを開ける。
「夜分すいません」
「如何云う風の吹き回しだ?」
 玄関に幽鬼の様に立っていたのは瀬戸慎一郎だった。
「入って、良いですか?」
 有無を云わせぬ口調に、高濱は微かに抗うが、瀬戸は無視をする様に紙袋を差し出し「飲みませんか?」と短く喋る。
「用件は何だ?」
「高濱さんに、関係が有る事ですよ。無論、僕自身にもですが……」
 瀬戸は、駆け引きとも取れる言葉運びで高濱を揺さぶる。
「入れよ……」
 高濱は短く瀬戸を促し、台所のドアを閉めると、ダイニングに瀬戸を招き入れる。
 荒んだ部屋の中。高濱がソファーに座ると、瀬戸も真似る様に座り、紙袋をどさりとテーブルに置く。