「これで、僕は何も心配しなくて良いんだ」
 ポタリ、ポタリと、少年が握り締めた包丁からは血が滴り落ちる。ベッドの上。母親の着て要るパジャマの上半身はビリビリに裂け、血が漏れ出しベッドを濡らす。
「僕は、自由に成ったんだ。そうだろ?」
『アア、ソウダトモ。コレデ、モウ、マイニチ、イタミカラニゲダサナクテイイ』
「これも、秀隆の御蔭だよ」
『ソンナコトハナイサ』
 少年は暗闇の中、小さな声で話して要ると、カタカタと、部屋の中に物音が響き渡り、少年はその音に驚いたのか、握っている包丁を思い切り握り込み、母親の顔目掛けて振り下ろす。
 包丁。切っ先が母親の眼に当たり、刃渡り10cmの包丁が深々と突き刺さる。鈍い手ごたえ。少年は柄の部分迄突き刺した包丁を、グルリと右に捻り乍抜き出し、返す刀でもう一度顔面に叩き込む。ザクリ。ズブリ。ザクリ。幾度となく突き刺される包丁に、母親の顔は徐々に人間としての原型を失って行く。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
『モットダ。モットダ。モットダ。モットダ』