「異変は無い、か」
高濱は自分の思い過ごしに自嘲気味な笑みを浮かべる。自分の身に災いが起きたからと云って、家族もと云う短絡的な自分の思考を拭い去る様に、美奈子が眠っている寝室の扉を開けて踏み込む。
「えっ?」
ピチャリと、高濱が踏み込んだ寝室の足元に水っぽい感触が靴の裏に広がる。
ベッドの上に寝ている美奈子と、子供部屋で寝ている筈の楓が居る。
「まさか―」
高濱の全身に嫌な予感が徐々に広がる。そんな馬鹿なと云う気持と、冷静に状況を判断し様とする自分。高濱は震える身体を押さえ込む様にナイトランプを点けて布団を捲ると同時に絶句する。
ベッドの上。蝋人形の様に血の気の失せた美奈子と楓が変わり果てた姿で横に成って要る。二人共両手足が切断され、二人は達磨の様に成り、ベッドの上は血の海に成り楓の下半身からは手が生えている。否。楓の下半身から見える手の薬指にシルバーのリングがはめられている。つまり、楓の下半身に、美奈子の左腕が押し込まれている。
猟奇殺人。高濱の頭の中にその文字が浮かんでは消えて行く中、高濱はマンション中に響き渡る悲鳴を上げて卒倒した。
*
高濱は自分の思い過ごしに自嘲気味な笑みを浮かべる。自分の身に災いが起きたからと云って、家族もと云う短絡的な自分の思考を拭い去る様に、美奈子が眠っている寝室の扉を開けて踏み込む。
「えっ?」
ピチャリと、高濱が踏み込んだ寝室の足元に水っぽい感触が靴の裏に広がる。
ベッドの上に寝ている美奈子と、子供部屋で寝ている筈の楓が居る。
「まさか―」
高濱の全身に嫌な予感が徐々に広がる。そんな馬鹿なと云う気持と、冷静に状況を判断し様とする自分。高濱は震える身体を押さえ込む様にナイトランプを点けて布団を捲ると同時に絶句する。
ベッドの上。蝋人形の様に血の気の失せた美奈子と楓が変わり果てた姿で横に成って要る。二人共両手足が切断され、二人は達磨の様に成り、ベッドの上は血の海に成り楓の下半身からは手が生えている。否。楓の下半身から見える手の薬指にシルバーのリングがはめられている。つまり、楓の下半身に、美奈子の左腕が押し込まれている。
猟奇殺人。高濱の頭の中にその文字が浮かんでは消えて行く中、高濱はマンション中に響き渡る悲鳴を上げて卒倒した。
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