「飲み過ぎたかな…・・・」 
酒が程好く身体に回り、高濱はふらふらと自転車を漕ぐ。だが、心地良い酔いと云うには、余にも複雑な酒だと云うのが高濱には有る。付き合い自体は十年近く有るが、石川の私生活に付いては余りしらず、不快な思いをさせてしまったと云う思いを拭う事が出来ない。
―又、次回飲み直したら良いか。
 高濱は沈んで行く気分を奮い立たせようと自分に云い聞かせ、ペダルを漕ぐ足に力を入れる。グッと、視界が早く成る。高濱は酔いでふら付く身体に鞭打ち走っていると、急に視界が回る。衝撃。アスファルト。高濱は自分に何が起こったのか分からず、混乱する頭で立ち上がろうとすると、腹に衝撃が来た。
「ぐあっ!」
 身体を鈍い衝撃が突き抜ける。高濱は身悶え乍頭部を両手で守り、顔を上方に向け様と喘ぐと、眼前に拳が迫って来る。反射的に顔を背けて身体を転がす。
「野郎!」
 高濱はふら付く足取で立ち上がろうとすると、背中に鈍い痛みが走り意識が薄れ、その場に昏倒した。