唐揚げを一口齧り、石川はピシャリと短く答える。高濱は、そんな石川の雰囲気を肌で感じ、そこから先の言葉を続ける事が出来ずに「そう、か……」と短く云い、会話をストップさせる。重い空気が流れる中、高濱は、以前石川に聞いた事を思い出す。小学校の時に両親を亡くしている。家族の話に成った際、手短に話した石川の顔を思い出す。高濱も、そこから先の理由と云う部分は、聞いて良い物か分からず、聞く事が出来なかった。
「如何した、飲むスピードが落ちているぞ」
 高濱は茶化した様な声を出し、沈んだ雰囲気を払拭する。誰にでも、触れられたく無い過去の一つや二つは有る。高濱は、自分の軽率な言葉を打ち消す意味も込めて、ただ只管石川に酒を進める事にした。