騒々しい店内。高濱達のテーブルの上には次々と料理が並べられる。焼き鳥の塩や、刺身等のあっさりした味から、鳥の唐揚げや餃子等のパンチの効いた濃い味の物迄が広げられる。
「あの新人、どんな感じです?」
 焼き鳥の串を頬張り乍石川が高濱に声を掛けると、高濱は、燗された徳利の酒を猪口に注ぎ、グビッと一息煽り顔を微かに歪める。
「まあ、あれだな。人を見掛けで判断したら駄目だって云う良い例だよ」
「それは良い意味で?」
「だな。薄気味悪い気配と相反する様な、何と云うか、妙に礼儀正しいんだよ」
「意外ですね」
「ああ。俺も始めは、最近流行りの引き篭もりかと思っていたよ」
「僕の予想では、人を一人位は殺した事の有る前科持ちだと思っていたけれどね」
 石川のブラック過ぎる表現に、高濱は複雑な思いを抱き乍話し出す。
「確かに、俺も同じ様な印象を受けたけれどな」
 唐揚げにレモンを絞り乍、高濱は頷く。
「そう云えば、殺しって云えば、俺の近所のマンションで殺しが有った様なんだ」
 石川は、殺しと云う言葉に微かに顔を歪め、困惑気味に話し出す。
「タカさんのマンションの近くって云うのは、僕の家の近くでも有るんですよ」
「互いに御近所だからな。それより、ニュース見なかったのか?」
「昔から、TVには興味無いんですよね」