リアル

田中夫妻の顔が、両親の惨殺シーンと重なっては消えて行く。私は、私自身の力で立ち直らなければならない。震える身体。蘇る記憶。私は、震える身体を抑え付ける様に、ベッドの脇を思い切り掴み、混乱する記憶を押さえ込む様に身悶えた。

 身体が思いの他に軽い。私は薬の抜けた身体を解してシャワーを浴びる。熱いシャワーが、私の身体を静かに覚醒へと導く。関から渡された薬を利用すれば、一ヶ月もすれば完全にヤク中から抜け出せるかも知れない。自堕落な結果が生んだ地獄巡りだ。私は自分で蒔いたタネを摘み取る決意を胸に、スッキリした身体をバスタオルで拭い外出の準備をする。グレーのパンツに、黒のポロシャツを着、上に白のサファリジャケットを羽織り、ラフな格好に着替えて玄関から出る。
 心地良い肌寒さだ。私は煙草を取り出し一服点ける。徐々に身体が普通の煙草を受付け出した。思い切り吸い込んだ煙を吐き出し、マンションの外に出る。街灯が照らす道。私は「スナック空」に向けて歩いて行く。別段待ち合わせをしている訳では無いが、何と無く、身体が「空」に向ってしまう。私は気分の赴く侭に歩いて行く。
―久し振りだな 
 雑居ビルの前。エレヴェーターに乗り込み七階迄一気に登り、非常階段のドアを開く。乾いた音を発ててドアの外に出る。革靴が妙に大きな音をビルの谷間に響かせる中、店のドアを開けて中に入る。
「よう」