リアル

関が最後の言葉を坂部に掛けて携帯の通話を終わらした。
「これで、良いやろう?」
「後は、時が満ちるのを待つだけか」
「今が夕方の十八時。後六時間前後で全ては終わる」
「例の物は?」
「これや」
 関がドカリとテーブルに鞄を置く。最近では常連の様に「オールドパル」に訪れている。麓も、私達の行動には我関せずと云う風にしてカウンターでグラスを磨いている。
「生理食塩水・ペントソール・塩化カリウム。この三つは比較的手に入り易いんや」
「これが?」
「こいつを点滴の要領で静脈に注射して、初めに食塩水を入れて、次に麻酔薬のペントソールを入れて、最後に塩化カリウムの順番や」
「痛みは?」
「最初の注射の痛み意外は無い。後は眠る様に静かに息を引き取る」
「時間はどれ位で?」
「電話でも云うたけど、大体五分前後で完了や」
「分かった」
「えらく、時間を気にするな」
「午前零時。その時間に苦しみから解放してやりたい」
「なんや、意味でもあるんかいな?」
「曜日の境界線。社会のシガラミや現状に苦しんだ夫妻だ。全てのシガラミが及ばない日付の境界線に、全てから解放してやりたい」
「気障な気遣いやな。やけど、その気配りは嫌いやない」
「私は、自分が悪に属するとは思うが、他の人間の様な曖昧な事はしたくない」
「色々とあった口振りやな」
「人並みにはね」
「まぁ、ワシも余り誉められた人生では無いけどな。しかし、今回の件でワシなりに色々と調べはしたけど、ほんまにこの国は考えなあかんと思うで」