リアル

坂部は、恐らく自分よりも年下であろうママの雰囲気に飲まれる。
「まぁ、片桐の紹介だから、その辺りの説明は受けているとは思うけれど、念の為よ」
「だ、大丈夫です」
「分かったわ」
 ママは坂部の承諾を受けてグラスを用意してホットウィスキーを作る。底冷えに震えていた坂部には物凄くありがたい。
「飲み乍ら、話してくれて良いわ」
 温かいグラスを掌で包み込む。人肌の温もりが坂部の寒気を身体から追い出す。ゴクリと一口飲むと、身体の芯から温まり坂部は一息付く。
「僕は、今福祉関係の仕事をしているんです。具体的に云うと老人介護になるんですが、その仕事で出会った人との話です―」
 坂部はこれ迄の話を簡潔に説明し出す。依頼に訪れた時点で、アヤフヤな態度では駄目だと云う思いと、覚悟を決めたと自分に云い聞かせる事で、自分を叱咤する。ママは、話を聞いているのか如何か分かり難い程に、グラスを磨き上げたりボトルの整理をしたりと忙しなく動く。だが、そのママの動きが坂部には良かった。下手に合いの手を入れられると、押さえ込んでいる感情が発露しそうで怖いからだ。感情を押し殺し淡々と話を進め、最後に、百五十万をカウンターに置き視線を上げる。
「これが、僕が預かって来た報酬です。僕には足りているのか如何か分かりませんが、片桐さんには、此処で相談する様に云われたんです」
「金額は関係無いわ。片桐が紹介したのなら、それが一つの答えよ」
「それじゃあ」
「今回の依頼、請負人に伝えて置くわ」
「あの―」
「誰が手を下そうと貴方には関係無い筈よ。下手に深入りする事は賢い選択とは云えないわね」