「今迄も、これからも変わりは無いさ」
「普通、そこ迄複雑な感情が入り混じった内容を聞いたら、戸惑うものよ」
「綺麗事を並べる程、私は若くないよ」
「年齢を重ねるだけで、苦い思いを薄める事が出来るなんて羨ましいわ」
「この場合、価値観の違いとでも云う方が良いのかな?」
私がグラスを弄び乍ら呟くと、ママは肩を竦めて天井を見上げる。
「分かったわ。その子が来たら依頼を受けておくわ」
「頼んだよ」
ママが語った価値観と云う言葉が頭の中を回る。自分で云って置き乍ら思うが、本当に据わりの悪い言葉だ。私の中の殺しとしての価値観と云うか基準は、金に成るか如何かだ。どれだけ綺麗事を云ったとしても、ギャランティーを貰わなければ話に成らない。今、私が働いている職場が良い例だ。本来、売買等が有り得る筈の無いスロットの攻略法を、欲の皮が突っぱった連中が挙って購入する。蓋を開ければ嘘っぱちなのにだ。
「依頼の受け方は何時も通りで良いのね?」
「今度私が来た時に依頼が入っていれば、何時もの通りにしてくれたら良い」
「分かったわ」
何時も通りの行動だ。どんな複雑な事情があろうとも、私には関係の無い事だ。割り切る為に、金と云う魔力で感情と云う厄介な痛みを薄め、世間が翳している常識と云う濃度を薄める。
「それじゃあ、宜しく頼むよ」
私はスツールから腰を上げて店から出る。どの様な顛末になるのか。私は今回の依頼の遂行に辺り、起こり得る可能性を頭で思い描き乍らエレヴェーターに乗り込み、夜の街に身を委ねた。
*
「このビルか」
坂部はビルの外看板を見て場所の確認をする。片桐に聞いた通りの番地を尋ねると、七階建ての雑居ビルに行き着いた。片桐の話だと、七階迄はエレヴェーターで行き、其処からは非常階段を昇り屋上に出ると云う事だった。携帯の時計は二十三時を回っている。本来なら家に帰っている時間に成るが、田中と話をした上で、片桐の云う方法での結論を出すと決めた坂部は、居ても立ってもいられずに、仕事が終わると同時に「スナック空」に向った。
エレヴェーターの中。坂部は緊張と寒さで身体が微かに震えるのが分かる。鈍いモーター音が一際高い悲鳴を上げ最上階の七階で止まる。
「普通、そこ迄複雑な感情が入り混じった内容を聞いたら、戸惑うものよ」
「綺麗事を並べる程、私は若くないよ」
「年齢を重ねるだけで、苦い思いを薄める事が出来るなんて羨ましいわ」
「この場合、価値観の違いとでも云う方が良いのかな?」
私がグラスを弄び乍ら呟くと、ママは肩を竦めて天井を見上げる。
「分かったわ。その子が来たら依頼を受けておくわ」
「頼んだよ」
ママが語った価値観と云う言葉が頭の中を回る。自分で云って置き乍ら思うが、本当に据わりの悪い言葉だ。私の中の殺しとしての価値観と云うか基準は、金に成るか如何かだ。どれだけ綺麗事を云ったとしても、ギャランティーを貰わなければ話に成らない。今、私が働いている職場が良い例だ。本来、売買等が有り得る筈の無いスロットの攻略法を、欲の皮が突っぱった連中が挙って購入する。蓋を開ければ嘘っぱちなのにだ。
「依頼の受け方は何時も通りで良いのね?」
「今度私が来た時に依頼が入っていれば、何時もの通りにしてくれたら良い」
「分かったわ」
何時も通りの行動だ。どんな複雑な事情があろうとも、私には関係の無い事だ。割り切る為に、金と云う魔力で感情と云う厄介な痛みを薄め、世間が翳している常識と云う濃度を薄める。
「それじゃあ、宜しく頼むよ」
私はスツールから腰を上げて店から出る。どの様な顛末になるのか。私は今回の依頼の遂行に辺り、起こり得る可能性を頭で思い描き乍らエレヴェーターに乗り込み、夜の街に身を委ねた。
*
「このビルか」
坂部はビルの外看板を見て場所の確認をする。片桐に聞いた通りの番地を尋ねると、七階建ての雑居ビルに行き着いた。片桐の話だと、七階迄はエレヴェーターで行き、其処からは非常階段を昇り屋上に出ると云う事だった。携帯の時計は二十三時を回っている。本来なら家に帰っている時間に成るが、田中と話をした上で、片桐の云う方法での結論を出すと決めた坂部は、居ても立ってもいられずに、仕事が終わると同時に「スナック空」に向った。
エレヴェーターの中。坂部は緊張と寒さで身体が微かに震えるのが分かる。鈍いモーター音が一際高い悲鳴を上げ最上階の七階で止まる。

