リアル

「そんな物かい?」
「人間社会を生きて行くと云う事はね、色々とシガラミがあるのよ」
「シガラミ、か」
「家族であったり友達だったり、本当に難しい事よ」
「それは一般論かい?」
「馬鹿ね。一般論が立ち入れる領域じゃないわ」
 ママが呆れた声を上げる。
「割り切れない感情があるから、人が、人として生きていけるのよ」
「難しいね」
「アンタには生涯分からないわよ」
「そうかい?」
「その話のお爺さんの気持を考えると、心が痛く成るわ」
 感覚の違いだろう。私は面倒な問題だと感じたが、ママは悲しい事だと云う。この辺りが、人間としての質を問われる部分なのかも知れない。
「取り合えず話は分かったわ。それで、アンタはその依頼を受けるつもりなの?」
「そのつもりだよ」
「信じられないわね」
「人を一人消す。何時もの事じゃないか」
「何云ってるのよ。アンタの本来の仕事って云ったら変だけど、基本的には殺されても仕方が無い人ばっかりでしょ」
「持ってこられる依頼の性質が、偶々そう云った類だっただけだよ。別に選り好みをしていた訳じゃ無い」
「本気なの?」
「ああ」
 私が即答すると、ママは悲しげな表情を浮かべ「分かったわ」と短く承諾した。
「アンタは、本当の意味でのプロね」
「如何云う意味だい?」
「ギャラの為ならどんな事でもするって意味よ」