田中の目尻がクシャリと皺くちゃに成り悲しげな声を出す。
「光さんの云いたい事は良く分かっておるよ。一概に国が悪いと云う訳じゃない。ワシら年寄りにも責任はあるわい」
「それでも、高齢者を狙い撃ちにした様な法整備には問題があります。財源破綻を防ぐ為と云う大義名分を武器に、絞り易い所から金を搾り取ってしまう行為は間違っています」
坂部は其処迄喋り大きく息を吐く。今、この場で政治的な事を云ったとしても詮無き事である。坂部は、冬特有の乾燥した空気に喉を痛めたのか、軽く咳払いをして姿勢を正す。
「僕が云いたい事は、田中さんには全て分かっている見たいですね」
「年の功じゃよ」
「そうかも、知れませんね……」
坂部は曖昧に肯定して微かに笑うと、田中がゆっくりとした動きで卓袱台から煙草を取り出し一服点ける。部屋の中を隙間風が通り抜け、灰皿に置いた煙草の紫煙がゆらゆらと揺らぐ。
「少し、待っとってくれるかな」
田中は意を決した様に呟き中座する。坂部は、田中の周りの空気が緊迫するのを感じ取り背筋を伸ばす。田中はガサゴソと箪笥を忙しなく掻き回してピタリと動きを止める。部屋の空気が一変して坂部の肌をヒリヒリと刺激する。眼に見えない境界線。本来、眼で見る事が出来ない一線が、今坂部には見えた様に思え瞬きして緊張する。
「光さんの云いたい事は良く分かっておるよ。一概に国が悪いと云う訳じゃない。ワシら年寄りにも責任はあるわい」
「それでも、高齢者を狙い撃ちにした様な法整備には問題があります。財源破綻を防ぐ為と云う大義名分を武器に、絞り易い所から金を搾り取ってしまう行為は間違っています」
坂部は其処迄喋り大きく息を吐く。今、この場で政治的な事を云ったとしても詮無き事である。坂部は、冬特有の乾燥した空気に喉を痛めたのか、軽く咳払いをして姿勢を正す。
「僕が云いたい事は、田中さんには全て分かっている見たいですね」
「年の功じゃよ」
「そうかも、知れませんね……」
坂部は曖昧に肯定して微かに笑うと、田中がゆっくりとした動きで卓袱台から煙草を取り出し一服点ける。部屋の中を隙間風が通り抜け、灰皿に置いた煙草の紫煙がゆらゆらと揺らぐ。
「少し、待っとってくれるかな」
田中は意を決した様に呟き中座する。坂部は、田中の周りの空気が緊迫するのを感じ取り背筋を伸ばす。田中はガサゴソと箪笥を忙しなく掻き回してピタリと動きを止める。部屋の空気が一変して坂部の肌をヒリヒリと刺激する。眼に見えない境界線。本来、眼で見る事が出来ない一線が、今坂部には見えた様に思え瞬きして緊張する。

