リアル

畳みに座り込んだ田中は、掃除をしている坂部に申し訳無さそうに頭を下げる。
「いえ、気にしないで下さい」
 若干他人行儀な口調で坂部は田中の問い掛けに答え、テキパキと掃除を進めて行く。ヘルパーの滞在する時間は決まっている。重過ぎる問題を話す為に、坂部は何時も以上の早さで作業を進めて行く。キッチン・風呂場・部屋とテキパキと掃除を終わらせると、田中が熱いお茶を二つ入れて卓袱台の上に並べている。
「光さん、少しお茶でも如何だね?」
「そうですね、お言葉に甘えます」
 坂部が快諾すると、田中の顔中の皺がクシャクシャに成り嬉しそうに喜ぶ。坂部は、この田中の笑顔が、若しかしたら曇るかも知れないと云う思いを胸に座布団に腰を下ろす。
「煎餅、食うかね?」
「頂きます」
 二人揃って茶を啜り乍ら煎餅を齧る。パリポリと軽快な煎餅の音が部屋に響き渡る。坂部は、逃げ出したく成りそうな思いを仕切り直す様に正座する。
「田中さん」
「うん?」
「この間の話ですけれど……」
 坂部の覚悟を決めた態度に、田中も心成しか緊張の色を浮かべる。
「田中さんが仰っていた事って云うのは、本心なんですか?」
「如何答えたら良いのかの……」
「梅子さんの苦しんでいる姿を見たくないって事です」