リアル

「乗り掛けた船やろ?その辺りの専門家として、坂部君の力に成ってやるのも一興やで」
「冗談じゃ無い」
 私と関の視線が絡み合う。坂部は如何して良いのか分からずに硬直している。
「和さん」
「何や琢磨。今面白所なんやで」
「そちらの片桐さんは……」
「琢磨の感じとる通りや」
「成る程ね」
 麓と関が言葉少なげに言葉を交して納得し合う。麓と関の会話の流れを察するに、麓も裏の世界に関わっているのかも知れない。
「さてと、話を元に戻すけど、坂部君は如何するつもりや?この話は、法的な解釈をするのであれば、嘱託殺人って云うて、背景は如何あれ立派な殺人や」
「……僕は」
「そう云った現実を踏まえて考えんとあかん問題や」
 坂部は逡巡した末に私に「如何したら良いんですか?」と聞いて来る。坂部は、第三者としてのラインを超えて深入りしたが為に、自分を見失っているのだろう。私は坂部を試す意味も込めて一枚の紙に住所を書く。
「君が人としての一線を越える覚悟があるのならこの店に行ってくれ。店の人間には、私からの紹介だと云えば良い。勿論報酬は必用に成るがね」
 私は、紙にスナック空の住所を書いて手渡す。あのスナックに一見の客が行く事は無い。
「坂部君」
「はい」
「先に云って置くが、今日私達の間で交わした会話の内容は全て忘れるんだ。私と君は面識は無い。意味は、分かるね?」
「は、はい」
「それで良い。後は、その店のママに自分の思い描く方法論を伝えれば良い」