リアル

「そうかも、知れません」
「坂部君、君は如何したいんや?」
「僕は……」
 重い沈黙が流れる。私は懐から煙草を取り出して一服点け、思い切り肺に煙を吸い込む。ふわりと、身体が宙に浮かぶ感覚が身体を包み込み脳味噌が痺れる。難しい問題だ。私が口出しする問題では無いのかも知れない。
「仮にや、君がその夫婦の間柄に踏み込むとしたら、それ相当の覚悟が必要に成るし、そんな事ばっかり繰り返しとったら、今やっとる仕事を続けて行く事はできへんで」
「……分かっています。僕達に取っての利用者と云うのは身内では無い。他人として接して行かないと駄目だと云う事は、所長にも云われました」
「所長さんの云う通りやな。福祉と云う仕事は綺麗事の塊に見えるけど、実際には利益を上げんと運営出来へんし、金が動いている限りは商売や。商売に感情論は禁物や」
「でも……でも、如何しても……」
「それでもや、それでも君がその一線を超えたいのであれば、相談する場所は限られて来る」
「相談する場所?」
「そう云った話なら、この片桐に任せたら良いと思うで。最も、坂部君が田中夫妻の関係に踏み込んで、最後迄見届ける勇気があるんやったらの話やけどな」
 不意に関が会話の流れを私に向けて来た。私はトリップした頭の侭で二人を交互に見ると、二人の視線は私に向けられていた。
「如何云う話の流れで私に行き着くんだい?」
 私が困惑の声を上げると、関が肩を竦めて話し出す。