リアル

「何か飲むかい?」
「ハイ・ボールとソフト・ドリンクを頼むよ」
 男が手馴れた手付きでハイ・ボールとジンジャーエールをグラスに注いでいると、ドアが静かに開けられた。
「貴方、看板の明かりが消えているわよ」
「店に居る時はマスターだ」
 ショートヘヤ―の童顔の女が店内に入って来る。恐らく三十路に差し掛かるか如何かと云う範囲の年齢だろう。口調から察するに、この二人は夫婦と云う所か。
「父さん。これ何処に置いておくの?」
 女の背後から、年の頃なら十五歳前後の少女が困惑した声を上げている。年齢的な事を考えるのであれば、余りにもアンヴァランスな家族だ。
「すまないな。カウンターに置いてくれ」
「マスター、今日は定休日じゃ無いですよ」
 私達の存在に気が付いて無いのか、女が困惑気味な声を上げる。私は如何挨拶をしたら良いのか考え乍ら、此方から話を振る事にした。
「私達が原因だよ」
「えっ?」
 ボックス席に座っている私が声を上げると、驚きの声を上げて入り口の二人が視線を寄越して来た。
「美帆、家に帰ってなさい」