リアル

「ワシの中で、結論はでとるよ……」
「それは?」
「妻を楽にしてやりたいだけなんじゃ……ただ、それだけじゃ」
 田中はその言葉を最後に涙を流す。
「う……あ……」
 ベッドの上。梅子が静かに呻き声を上げる。
「ナース!」
 坂部の全身に緊張が走り、すぐにナースコールを押して回線を繋げる。
「如何しました?」
 天井のスピーカーから、ナースの声が病室に響く。
「田中さんが、酷く苦しんでいます!」
「分かりました」
 プツリと回線が途切れ、坂部はベッドの上の梅子に視線を向ける。
「大丈夫か!?」
 田中は狼狽した顔を浮かべ乍らも、梅子の腕を確りと握り締めていると、病室のドアが開けられドクターとナースが入って来る。
「如何しました?」
 ドクターは緊迫した口調で田中に声を掛ける。
「急に苦しみ出して……」
 ベッドの上からは断続的に梅子の呻き声が聞こえる。
 ドクターが梅子の脇に立ち、身体を調べて看護婦に指示を出す。
「ツワイスロンを二倍に、プリンペラとプルゼニドだ」
「はい」
 慌しく動き回るドクターを尻目に、坂部たちは如何する事も出来ずに立ち竦む。
「光さん、表に出ましょう……」
 呆然とする坂部に、田中が悲しげに声を掛けて立ち上がる。
「分かりました……」
坂部は静かにドアを開けて廊下に出る。
「光さん、お茶でも飲まんかね?」
 田中の言葉に坂部は頷き、案内板に書かれている指示に従い歩いて行く。トボトボと寂しげに歩く田中に、坂部は掛ける言葉が見付からずに、我を忘れて田中の後ろを付いて行くと、自動販売機とベンチが見えた。
「座っていて下さい」