リアル

無論、その中には取るに足らない悩み等もあるのだろうが、本人からすれば、その問題点が心を苦しめる事に成り、結果として日々の生活は生き地獄の様相を呈する。心を占める悩みの重さは当事者にしか分かる訳が無く、正しい価値基準等は無い。死のうとする者を引き止める側は、その部分も踏まえて止めなければ只の偽善者でしか無い。人が分かり合うと云う事は、本来それ程に難しい悩む者の問題点を打開して社会復帰に導く事が出来無ければ、幾ら真摯に相談を受けて更正をさせ様としても、最終的には責任を取る事の無い第三者としての距離感から抜け出す事は出来ず、その様な者から出て来る言葉は詭弁でしかない。坂部は田中の口から語られる言葉に何一つ答える事が出来ず、歯痒い思いを抱いて俯く。
「僕は……」
「すまんな、変な事を云って……」
「いえ……」
「ただ、ワシは今迄そんな事を真剣に考えて生きてこなかったんじゃ。死と云う暗い部分は見ない様にしての……若しも、ワシが妻と同じ立場としたならば、どの様な道を選ぶんじゃろうか。毎日同じ事を考えてしまうんじゃ」