大降りへとかわる雨。地面を跳ねた水しぶきが足元にかかる。 あたしの耳はまた音を拾いはじめ、止まっていた時間が動き出す。 「大丈夫?」 目の前には気に食わない男。 いつもは顔をみるだけでムカムカするのに、いまはなぜか、そんな気分にはならない。 逆にホッとする自分がいる。こんなふうになったあたしに頬笑んでくれてるから? 差し出された手のひら。吸い込まれるように、自然と腕が動いた。