ふと会話が切れて、なんとなく気まずい。

どうしたものかと考えるけど、悠里のことといい勉強のことといい、今日はクタクタだった。


でも、この空気を打破したのは安堂くんだった。


「ねぇ、美波ちゃん」

「……なに?」

 声のトーンが優しいけど、昨日のこともあったし、雰囲気で伝わってしまう。


「僕と、つき合わない?」

「………」

 安堂くんはカッコいいし、優しいし、話も合うし、申し分のない素敵な男の子だ。

あたしなんかには、またとないチャンスだと思う。


だけど、自分の中で消化できない想いがあるのに、安堂くんと向き合えるわけがなかった。

黙ってしまったあたしに、更に追い討ちがかかる。


「美波ちゃん、宮村先生と付き合ってるんでしょう?」

「………なっ…!!ち、違うよ!」


 やっぱりバレちゃってたの!?

少し仲の良い先生と生徒に見えなくもないはず……と、言い聞かせてた。


「先生と生徒だもんね、言えないよね」

「ほ、本当にちがうの……っ」

 必死に否定してるのに、安堂くんは笑ってた。

すべて、見透かされていた。


「いいんだよ、僕にはわかってる。……隠し通したいんでしょう?」

 まっすぐな瞳が、もうあたしには限界だった。


 いろんなことに我慢して、悲しくて。

そんなときに“スキ”といってくれた人は、とても優しくて。



「……頷いたら、あたしたちは一緒にいられなくなっちゃうもん」

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