“来ちゃった” なんて、簡単な言葉で済まされないのは分かっている。


本来……。 女子が男子の部屋に行く事は、理由が無い限り許されていない。


もし、部屋に行っているのが見つかったら……。

あたしといっくんには、“お説教”という、愛のムチが待ち受けている。



「こんなとこにいたらヤバイから、部屋に入れ」


運が良いことに、今は先生たちが見回っていない。

だから、簡単にいっくんの部屋にまで来ることが出来た。


「陽太はもう寝ているから、静かにな」


「うん」


いっくんと陽太くんは同じ部屋。

ベットが二つで、壁側が陽太くんみたい。


「ほら、これ掛けてベットに座っていろ」


「ありがとう」


いっくんから手渡されたブレザーを肩から掛けて、窓に向かい合うように座った。


「何かいるか?」


「ううん、いらない」


陽太くんが眠っているせいか、いつもより小さい声で話す。