分厚いドアを開けると、大音響が漏れ出してきた。
 
音勘が良く、魅力のある声。
 
上手い、と思わせるヴォーカルが彼の耳に入ってきた。
 

ステージの上で歌っているのは、彼の双子の兄、彩人(アヤト)だった。
 
歓声が、彼の歌に貼りついてゆく。
 
その魅力的な声を吐き出している体は少し小柄で、自称170cmだ。
 
双子の弟である彩世(アヤセ)のほうがほんの少し背が高いのだが、その彩世が170cmちょうどなので、兄は身長を誤魔化していることになる。