【短編】君しか見えない

「い〜く〜」


茅乃?


茅乃には、悪いことしたな。


けど、私的には、終わった話だから。


私は、周りを確認してから、茅乃の名前を呼んだ。


「茅乃、こっち。」



「郁、どういうこと?」


茅乃も気を使ってか、声のトーンを下げてくれた。


「実はね。」


私は、茅乃にすべてを話した。


てか、秘密だったけど。


あれを見たら、無理でしょ?


「だから、海斗くんは、郁を見てたのね。」


「えっ?」


海斗が私を見てた?


「私、気になってたの。
海斗くんの視線。
いつも、郁だった。
海斗くんは、郁に片思いなんだって思ってた。
意外にシャイなんだとかね。
かわいいなとか思ってた。
それが、好きになったきっかけでもあるんだけどね。
だから、気づかないフりしてた。」


茅乃は、切なそうに遠い目をした。