夏休みが始まった。 蝉が土から起き出し、五月蝿い位に鳴き声を響かせている一方で、寮の内部は里帰りに心を躍らせ荷造りする生徒で賑わっている。 清士郎も、その一人だ。 「よう」 「……なんだ、てめぇか」 声を掛けられ振り向くと、清士郎は忽ち嫌そうな顔をした。 そこに立っていたのは、木田兵助という清士郎の同級生だった。 二人は顔を合わせると喧嘩ばかりしている、云わば犬猿の仲というやつだ。 .