やっと声を掛けてくれた。 俺は言われた通り顔を上げて先輩の顔を見た。 まだ不機嫌そうな顔をしている。 俺はそっと先輩の手を引き、肩を寄せて耳元でもう一度ごめんね、と謝った。 見た目よりも細い肩に抱きしめたい衝動を抑えながら、もう一度顔を見る。 その表情は心なしかさっきよりも穏やかで、自然と俺も口元が緩んでしまう。 「……別に、待たされたことに怒っていたわけではない」 「え、そうなの?」 .