俺に与えられた武器は一挺の銃と一振りのサヴァイバルナイフだけだ。腕時計のデジタルが示す残り時間は一時間。廃校を舞台にした意趣返しの終了迄残り時間は少ない。今の日本は俺が子供の頃に見た法治国家から随分と変貌している。
 西暦二千三十年。多様化する凶悪犯罪の抑止力の一環として、今迄法律上で禁止されてい『決闘罪』が撤廃され、新たに『決闘罪適応特種法案』が可決された。本来なら野蛮な行為ではあるが、裁判員制度だけでは解決する事が出来無い遺族の遺恨や、少年犯罪に対した処置として可決された。
 勿論適応迄には複雑な審査があり、それらの審査をクリアした者にだけ与えられる生涯一度の権利。決して二度目の権利が発生する事は無く、適応も死刑囚だけと限定され、訴訟を起された側にも公平を規す為にある程度のメリットとして、死刑から終身刑への変更が上げられる。刑期の軽減に対しては、死ぬ程のリスクを背負ったのだから当然だと云う事らしく、遺族側は恨みを晴らす機会を得る事が出来る反面、相手の刑期の減刑と云うリスクを背負う事に成る。
 決闘罪の内容は簡素で、互いに同じ武器を装備し、二時間の間に相手を殺す事が出来無ければ終了に成り、特に最大の注目点としては、指定エリアの情報公開は当日と成り、指定されたエリア外に踏み出した際には、配置された特殊部隊に寄って射殺されると云う事だ。詰まる所、生き残る為には制限時間を逃げ切るか、相手を殺す以外に道は無い。