優しい雨

修一と面会している間は彼のことは忘れることにしていた。

もちろん本当に忘れてしまうことは無理なことだが、なるべく考えないようにしていた。

彼の存在自体が無いかのように、私は旧友に会った話も夫には全くしていなかった。

それが私の夫に対するささやかな礼儀のような気がしているのかもしれない。




呼び出して貰ってから夫はいつもより短い時間で面会ラウンジにやって来た。

相変わらず細い身体で動きにも滑らかさがないが、今日は薄っすらと微笑を浮かべている。



入院した当初は夫の表情や言葉に一喜一憂したものだった。

しかし最近は少し気持ちに余裕が出来たのか、面会した時の夫の状態に気持ちが揺れるということが少なくなっていた。

それでも少し前までは、夫が温和な表情であるとほっと胸をなぜ下ろし、歪んだ表情をしていると自分まで憂うつになったものだった。