優しい雨

タクシーに乗込むと、少し力が抜けて落ち着いて来た。

すると三人で飲んでいた時にちょっと気になっていたことを思い出して、私は彼に訊いた。

「高梨君は私の夫のこと知っていたの?」

「なぜ、俺が話す必要があるの?話題にしたければ自分でしたらいい」

思ったよりそっけない彼の返事。

もしかして気分を悪くさせてしまったかもしれない。

「次の信号を左に入って下さい。しばらく行ったら公園があるので、公園を過ぎたらすぐに停めてください」

どうやら彼のマンションの近くまで来た様だ。

勢いで彼に引っ付いて来てしまったが、彼にしてみれば迷惑なことかもしれない。

不安で大人しくなった私に、彼は「着いたよ」と優しく声を掛けた。

そして料金を支払った後、先に車を降りた彼は、私に手を差し伸べた。

私はこういった気遣いに慣れていなくて、手を引いてもらいながら自分がまた赤くなっていくのを感じた。